ラグタイム2号店
その日の夜。

「どうしよう、朝貴さん」

夕食を終えて部屋に入ったとたん、静絵が泣きそうな声で言った。

俺はどう声をかければいいのかわからなくて、泣きそうな顔をしている彼女を抱き寄せた。

「たぶん…ほんの一部のヤツらしか、あの雑誌は買わないと思う。

例えば喜多さんみたいに写真を撮ることを趣味にしている人とか」

静絵の背中をさすりながら、俺はようやく彼女に声をかけることができた。

「そうだといいんだけど…もし友達があの雑誌を見ていて、両親に教えていたら…」

泣きそうな声で呟いた静絵に、
「静絵、俺たちの関係者が誰もあの雑誌を見ていないことを祈ろう」

俺は声をかけた。

「うん…」

静絵は首を縦に振ってうなずいて、呟くように返事をした。
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