すべてが思い出になる前に
フェンス越しで見ていた友理奈の背後に、自転車がすれ違い様にサッと風が吹いた。
後ろを振り向くと、クロスバイクから降りて荷物を肩に背負い直す涼太の姿があった。
「よう、お待たせ!」
友理奈に向かって右手を上げ、真っ直ぐ歩み寄る。
「ちょっと待ってて‼︎」
涼太は右手を友理奈の左肩にポンポンと叩いて、コートへ入って行った。
「みんな久しぶり‼︎」
「本当に来た‼︎大丈夫なのか?もうテニスはしないんじゃ…」
「あれから何年だってんだよ‼︎大分戻ってきたんだよ、ほら」
後輩達の輪の中で肩をぐるぐる回して見せる涼太だった。そんな涼太を遠くのコートから見ていた翼が、コートから声を掛けた。