すべてが思い出になる前に
「涼太遅せーぞ‼︎さっさと早くしようぜ‼︎」
「おう、準備するから」
後輩達がザワザワし始め、涼太はベンチに座りラケットやタオルを取り出した。
そして普段用のスニーカーからテニスシューズに履き替え、紐をキュッと解けない程度に結んだ。
スッと立ち上がり、コート内に入っていく涼太はネット越しにいる翼に言う。
「病み上がりなんだから、手加減してくれよ」
「じゃあ始めますか」
翼はテニスボールを3回コートにバウンドさせて真上に高く上げ、涼太は反射的にレシーブの低い構えを取る。
バンっとラケットに当たったボールはスッと涼太の足元をすり抜けて行った。
翼の力強いサーブに驚いた涼太は、ボールを目で追っていた。