押しかけ社員になります!

「送って頂き、有難うございました」

「うん。本当に大丈夫なのか?」

「はい」

判子で押したように、はいしか言わないのが気になって仕方ない。

「西野、親御さんと何かあったのか?」

鎌を掛けたつもりは無い。原因があるとするなら、それしかないからだ。

…。

「おやすみなさい」

カチャ、ガチャ。あ、お、おい…。

「西野…。西野」

「大丈夫です。有難うございました。おやすみなさい」

ドア越しに返事が返って来た。はぁ。明らかに可笑しいだろ。こんなんで、はいそうですかって帰れるか。…何が、大丈夫、だ。大丈夫な訳がない。

「西野、開けてくれ、頼む。…西野。開けろ。開けないなら鍵、ぶっ壊すぞ」

…。

カ、チャ。

「…どうぞ」

つい、どすの利いた声を出してしまった。俺はヤミ金の違法取り立てか…。脅したから開けたなんて。ふぅ。
まあ、いい。この際、理由は何でもいい。ドアが開けば結果オーライだ。

「…何かあったと言うより、親心に触れたと言うか…。改まった話なんかした事なかったし、親子のような他人のような…、子供扱いなのか、大人として見られているのか…。何だかよく解らなくなって…」

結局こんなだから、部長の顔を見たかったんだ。…不安だったから。良く言われなかった…反対された、と、言えない。

「何もかも話して、聞きたい事は聞いて貰って、俺を知って貰えるように話をするから。まず、そこからだ」

あ、何故…そんな言い方…。

「…反対、されたんだろ?最初から諸手を挙げて賛成されるとは思っていないよ。
親御さんからしたら大事な娘なんだ。簡単じゃ無いのが普通だよ。良く思われなくても、自分達で勝手に結婚する事も出来る。でもそんな事はしたくない。
ずっと付き合っていくのに、反対されたままでは良くないからな。俺は何度だって会いに行くつもりだよ?」

…部長。そこまでするのは男の覚悟?責任?

「西野を失いたく無いからな」

「部長…」

「本当に…。はぁ。何故先に言わない…。不安になったなら二人で解決していけばいい事だ。車、停め直して来る」

「…部長?」

「ちょっとと言わず、俺は長く会っていたい。抱きしめたいからな、俺が」

あー…、明日、朝一、会議があったな。早朝帰りになるな…。

「直ぐ戻る。あ、鍵、かけるように。戻って来たら必ず開ける事。いいな?」

「はい」

部長…。部長。
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