押しかけ社員になります!

RR…RR…。お、内線か。待ってくれよ。

「はい、青柳だ」

「加藤です。アポなしの来客です。もう向かっています」

「は、おい。ちょ…」

…何だ?アポ無しって。加藤の奴、何してる。


コンコンコン。
あ、はあ?もう来てるじゃないか。…あ、もう、弁当広げたままなんだけどな。

コンコンコン。
はいはい、…待ってくれよ。蓋をして、簡単に包んでだな…。
コン、コン。
だから…待て。

「はい!」

…全く、誰を通したんだ、加藤のやつ。

カチャ。

「お待たせしました。…どう…ぞ…」

「営業部、西野です。…部長ぉ」

「あ…西野。どうした…」

「入っても宜しいでしょうか」

「あ、ああ、勿論だ。さあ入れ」

あ、腰に腕を回されてグッと入れられた。

「部長。お昼ご飯を一緒に食べようとお邪魔しました」

「西野、どうなってる。アポ無しの客とは西野の事か。しかし…嫌がってたじゃないか、ここには来ないって言ってたのに」

正面から腰に両腕が回された。近い。

「はい。加藤が下に来て、今日は秘書室も人が居ないから、今から一時間だったら大丈夫だぞって。早く行けって」

西野の手にはランチバッグがあった。加藤か…。はぁ。だからアイツあんな連絡の仕方…。
はぁ。…まあ。それはこの際いい。

「西野、ちょっとこっちに」

手を引かれた。

「はい?」

デスクの前まで来た。

「キャッ、部長!」

「…シーッだ、西野。…はぁ」

こんな事、会社ではしない人なのに。…二回目ですよ、部長。背中と腰を引き寄せられ抱きしめられた。…ちょっとだけですよ。

「部長、お忙しそうですね…」

「ん、拘束時間が長いんだ。次は誰と、次は誰と、と。毎日そんなんばっかりだ…」

「愚痴ですか?」

「つまらん。営業部に戻りたい」

「駄目ですよ。常務には常務の仕事があるんですから。それから、これも。…駄目ですよ」

「…セクハラか?やっぱり」

「はい、ここは会社ですから。立派なハラスメントですね」

「はぁ…セクハラでもいい。もう少しだけだ…西野…」

「そう言ってると長くな…」

ん?…んん゙…。

「ん、ふ、…。部長!」

「西野…ん、ん」

「ん、もう、…部長!駄目です。さあ、ご飯食べますよ。時間無くなりますから、私」

…押し返しちゃった。フフ…本当は強引に口づけられた事、少し嬉しいと思っている。駄目って言わないと大変だから言ってるけど。


「…なぁ西野ぉ…」

「…何ですか?」

可愛らしい言い方をして…。何ですかね。

「秘書にならないか?」

「…嫌です。駄目です。加藤が居るじゃないですか。加藤の事は部長が引っ張ったんじゃないですか」
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