押しかけ社員になります!
ピンポン…。
あ、帰って来た。
「お帰りなさい、お疲れ様でした」
「う、ん…ただいま、和夏」
あ、…。もう~。でも嬉しい。
「セクハラだ、西野~」
あ、部長…、抱き着いて来た息から少しお酒の匂いがした。
「…大丈夫ですか?お疲れ様でした。ご飯は?
軽く食べられるように雑炊用意してありますけど」
「ん、食べる」
「お風呂は入っても大丈夫ですか?沢山飲んで無いですか?」
「ん、大丈夫だ。後で、少し時間をおいて…シャワーだけにしておく」
「はい」
コートと鞄を受け取り書斎へ。鞄を置いた。
部長は着替えに行ったようね。
鮭雑炊を出しておく。お漬け物と、気休めにシジミのお味噌汁、お茶。
あと、頂き物のマンゴー。
「ふぅ…頂きます」
「はい。スーツはハンガーに掛けてありますか?」
「いや…、まだベッドに、そのままだ」
「じゃあ掛けて来ますね…」
「……そのままでいいぞ…俺がするから」
部長のスーツ。お酒の匂いが少し、それから…知らない香水、…移り香が…香る。
…ふぅ。季節柄、これはもうクリーニングに出してもいいかも知れないな。そろそろ衣更え。聞いておかなくちゃ。
…勝手にポケットを探ったりはしない。ハンガーに掛け、調え…そのまま掛けておいた。
ネクタイはしまって、靴下とワイシャツは洗濯…。
…このネクタイ…素敵ね…。お昼に見た時もよく似合っていて格好良かった。
自分で買った物かな。それとも…誰かのプレゼントかな。部長の物は部長にしか解らない。…いけない。また勝手に想像している。
…部長は…大人の色気があって格好いい。そういった社交の場でもモてるに違いない。だから…仕方ない。
「…西野…縛りたいのか…」
「っ、ぁ、部長…。はぁ…、びっくりしました…」
後ろから腕を回され抱きしめられた。タイミング悪いですよ…。泣いてしまいそうです。
「…ネクタイ持ってよじってるから…。俺を縛りたいのかと思って…。それとも、あぁ、縛られたいのか…」
「ち、違います!…。そんな事しません。…しないでください。…今日も格好良かったなと思って、…思い出していたんです…」
「クス、…そうか。雑炊、美味しかったよ。一緒に食べないか、マンゴー」
首筋に軽くキスをされた。
「…ぁ、…はい…」
ん…もう。フニャフニャになる事、知ってる癖に。何だか今こんなの…ずるい。勝手にだけど、上手く誤魔化された気になってしまう。
「どうしたんだ…」
「…何でも無いです」
何でも無くは無い…。やっぱり妬いて…切ない…。クルッと回され、正面からすっぽり抱き込められた。
「…仕事上とは言え、ごめんな」
頭にキスをされた。
え?
きつく抱きしめられた。
「今にも泣きそうな顔をしている…。何も心配するな。西野だけだ。抱きしめるのも、それ以上するのも。何もかも全部、ずっと西野だけだ。俺の心は、誰より西野がよく解っているだろ?ん?」
ぁ、…ん、ふ。唇を甘く重ねた後、見詰めながら頭を撫でられ抱きしめられた。
「はい…」
部長〜〜。よく私の心理を理解してくれていますね…。…部長〜。
「これは今は置いておこう」
手にしていたネクタイはベッドに放られた。