押しかけ社員になります!

「あ、部長の事好きだって思う時、今までみたいに部長、部長じゃなくて、吉城さん吉城さんて呟けば、自然にスライドするかも知れませんね」

髪を撫でられ、手を取られて包むようにして指に口づけられた。

「別に無理しなくて大丈夫だ。気にならないよ。それこそ自然のままでいい。部長が良ければ、部長で全然構わない」

ただ、俺を気遣って変な呪縛があるなら、囚われて欲しくないだけだ。

「俺なら大丈夫だ。大丈夫だからな、和夏」

大丈夫だ。西野が居るから大丈夫なんだよ。

「じゃあ、常務って呼ぶのは?」

「常務って呼ぶ努力をするくらいなら、それこそ、吉城って呼ぶ努力をして欲しいな」

「あ…そうでした」

「まあ、何でもいいさ」

「…はい」

「加藤のやつ、少し慌てさせてやるか。決めたぞ、今日はずる休みだ。俺も和夏も」

「部長!私は大丈夫でしょうが、部長はスケジュールが…」

「いいいい。大事な先には俺から連絡をしておくから。心配無い。話は通しておく。つき合い相手は皆、気心が知れているんだ。お互いが傷の舐め合いみたいなものだ。二代目や三代目の窮屈な現状の話をしたり、そんな仲だ」

部長…。やはり貴方は青柳、青柳吉城なのですね。


シーッ。少し悪戯っぽい顔をして、部長が唇に指を付けて合図した。
加藤に電話するのね。はい、静かにしてます。

RRR…。

「私だ。おはよう。今日休む。一切連絡は入れるな。…ああ。それから営業部の西野も休みだ。
…ああ、…、病欠だ。部長に伝えておいてくれ。
…ああ。…そうだ。頼むぞ」

あっ、終わったの?いとも簡単に休みになってしまった…。

「さあ、和夏。これで心置きなく休める。お礼のキス、してくれてもいいぞ?」

後ろから抱きしめられた。

「今、何時ですか?」

「ん?時間か?7時前…くらいかな。まだ寝るか?」

うわ、加藤、可哀相に。ワンコールで出るなんて偉いじゃん。秘書してる。あ、私、今日学校休まなきゃ。そっちはメールで何とか出来るか。

「和夏、何の心配だ?何かあるのか?」
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