押しかけ社員になります!

「…部長」

「…どうした、どうした、ん?」

私は今部長の胸で泣いていた。

「だって…」

西野様って…。それに、これは…。

並んだ指輪の半分は誕生石をあしらったものがある。部長…いつ私の誕生日を知ったの?
それに、どれにもプライスカードが付いていない。…これはこういう形式が当たり前なの?…。

お店の人がスッと居なくなった。

こんな場面には慣れているのだろう。もっと違ったシチュエーションでも、沢山出くわしている事だろう。
気を効かせて居なくなってくれたのだ。

「和夏、大丈夫か?部屋には二人だけだ。大丈夫だぞ。どうした、泣くなんて…」

「部長〜」

「あぁ…どうした…。さあ…涙を拭いて」

取り出したハンカチで優しく押さえるように涙を拭いてくれた。

…部長〜〜。

「さあ、どれがいい?泣き止んでしっかり見てくれ?これも綺麗じゃないか?」

サファイアとダイヤが交互に並んで、小さい花が集まったようにも見える。可愛い過ぎなくて、でも可愛い。

「綺麗…」

「うん、嵌めてみるか」

部長はそれを手に取ると、スッと指に通してくれた。

「…いいな。いい感じだ…綺麗だ」

「はい、綺麗ですね」

「他のはどうだ?」

まだ、見ればきりが無い程ある。でも…これがいい。部長が1番に嵌めてくれたこれがいい。

「これがいいです。あ、でも…」

一体いくらするのだろう。

「これでいいんだな?ちょっと待っててくれるか」


部長がドアを開けたらすぐ人が入って来た。

「これをお願いします」

部長が私の手を取って嵌めたまま見せた。
チーフのような女性は微笑んだ。

「畏まりました。こちらのデザインですね。サイズはいかがでしょうか?」

「今、嵌めた物と同じサイズで。…大丈夫だよな?和夏」

「…はい。ピッタリです」

「畏まりました。こちらでしたら直ぐに御用意出来るかと思います。ご準備致します、もう少々お待ちくださいませ」

はぁ、買っちゃうのね部長。買ってくれてしまうのですね私に。

「和夏、もう少し待っててくれるか」

部長が一緒に出て行った。
別の人が来て、失礼しますと、指輪のトレーを下げて行く。あ、これも返さなきゃ。慌てて抜いて戻した。


「和夏、お待たせ。さあ帰ろう」

「はい」
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