その背中、抱きしめて 【上】



やっぱり芦澤学園は強い。

県内でベスト8に入ってるどのチームも全然歯が立たない。

ただ唯一、うちのチームだけが互角あと一歩のところまで食いついた。


それはもちろんチームみんなの底力あってこそなんだけど、芦澤との試合になると高遠くんが驚異のスパイク決定率を叩き出したのが最大の要因だと思う。


ゲームの後、清水くんが私に

「あいつ、すっごい分かりやすいよね」

って笑いながら耳打ちした。


ほんと、分かりやすくてあからさま。

朝、清水くんに勝負を吹っ掛けられたのを真に受けてる。

それで思いっきり本気出しちゃってるんだよね。


1時間のお昼休憩、麻衣ちゃんと体育館の外でお弁当を食べて中に入ると高遠くんに声を掛けられた。

「先輩、対人やろうよ」


9月初旬、この『対人パス』をきっかけに私と高遠くんは離れることになった。

ちょっとトラウマになりかけてる単語。

でもあれ以来初めて高遠くんが誘ってくれたんだもん、トラウマを払拭しよう。

「いいよ、やろ」


誰もいないコートに2人で立った。

「右で打ってみてよ」

昨日学食で両利きって打ち明けたからか、高遠くんからリクエスト。

「いいよー。じゃあ高遠くんも右で打ってね」


2年前、レフトからの綺麗な右打ちに魅かれたんだよ。

またあの打ち方が見たい。



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