その背中、抱きしめて 【上】
私が右手で打って高遠くんがレシーブする。
綺麗に弧を描いて私の頭上に来たボールを私がトスする。
そのボールを高遠くんが右手で打って、私がレシーブした。
(わ…高遠くんの右打ち…感動)
「ほんとに先輩両利きなんだね。右でも普通に打ってくるんだ」
パスを続けながら高遠くんが珍しく笑顔になる。
「練習の時は右でも打ってたからねー。試合でも右打ちしてたんだけどなぁ、たまに」
「俺が見た試合は右打ちなかった」
そっか…全国決勝まで進んだら両手で打ち分けてる余裕なくて、左打ちしかしてなかったのかもなぁ。
「なんかめちゃくちゃ嬉しい」
高遠くんがずっと楽しそうにパスをしてる。
「何が嬉しいの?」
私の質問に返ってきた答えは
「ずっと憧れてた先輩とこうやってバレー出来てることが」
さっきからずっと部活中に見たことないような笑顔がこぼれてる。
「ねぇ先輩。先輩のスパイク見たい」
「えー?今打ってるじゃん」
「違うよ、ネット使って本気のスパイク」
高遠くんが私のトスしたボールを両手で掴んだ。
「え、みんなに見られちゃうよ」
「見せてやればいいじゃん。中3の時の先輩よりヘナチョコなスパイク打ってるやつ、今日も結構いるよ」
(そんなわけないじゃん…)
今日はどのチームも県内ベスト8以内に入ってるのに、そのアタッカーが中3の私より下のわけがないでしょ。
どうしようか考えて、ひらめいた。
「わかった。スパイク打つから、その代わり高遠くんの右打ちのスパイクが見たい」