その背中、抱きしめて 【上】
「俺のスパイク?」
「そう。しかも右打ちね。私も2年前、高遠くんのレフトからの右打ちに憧れたんだから。あれをまた見たい。どう?この話に乗る?」
高遠くんは苦笑して
「わかった」
って言ってくれた。
「合宿の時は先輩自分でトス上げて打ったからネット越えなかったけど、先輩のジャンプ力なら男子のネットの高さでも十分越えると思うよ」
そう言いながら、高遠くんはセッターの位置に立った。
「あれ?翔とゆず先輩何やんの?」
前田くんが近づいてきた。
「面白いこと」
高遠くんが自慢げに返す。
私は2回左肩をくるくる回して、高遠くんからボールを受け取った。
1つ深呼吸してからオーバーハンドで高遠くんの頭上にボールを上げる。
それを高遠くんが綺麗なハンドリングでジャストな位置にトスを上げてくれた。
3歩で踏み込んで思いっきりジャンプする。
(あ…この感覚…)
2年前を一瞬で思い出した。
打てると確信して左手を振り下ろす。
ボールが反対側のコートのど真ん中で大きな音を立てて跳ねた。
「え、今のフォーム…」
前田くんが目を見開いてる。
「そのフォーム、翔と一緒…」
「そうだよ。俺と一緒っていうか、俺が先輩と一緒」
高遠くんがはにかみながら答えた。
「え、何で?」
「俺が先輩の真似したから」
そう言って高遠くんがレフトにスパイクの準備に入った。