その背中、抱きしめて 【上】



高遠くんから山なりに飛んできたボールを、高遠くんが打ちやすいところにトスを上げる。

高遠くんの体がふわっと浮いた。


(あ、あの時と同じだ)


視線が奪われる。

そして右手が振り下ろされた瞬間、ボールは反対側コートに叩きつけられた。


「翔が右打ち…もうわけわかんねぇ」

前田くんがパニックになってる。

そりゃそうだよね。

私がスパイク打ってるだけでビックリするだろうに、それが高遠くんと同じ打ち方で。

しかも今度は高遠くんが右で打ってるんだもん。



「前田くん、大丈夫?」

声をかけても

「いや、全然大丈夫じゃないっす…」

と返された。


「え、ゆず先輩バレーやってたんですか?」

「うん、中学の時はね。ライトだったんだ。オポジットじゃないけど」

説明しても前田くんの表情はまだ固まったまま。


「中学…で、あんなスパイク打てるんですか?ケタ違いじゃないですか」

「すごいだろ」

高遠くんが横から言葉を挟んだ。

「すごい。ゆず先輩がスポーツテストで見せたあの垂直跳びはそういうことだったのか」

「しかも助走つけたら1mは飛んでるよ。ほんとすごいよ先輩は」

「ちょっと待って。何でゆず先輩と翔が同じフォームで打ってんの?」


前田くんがついに頭を抱えた。

(まぁそうだよね。意味わかんないよね)


「教えてやんない」


高遠くんが意地悪く口角を上げた。



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