その背中、抱きしめて 【上】
清水くんが電話を切って、私に笑いかける。
「翔、今からダッシュで戻ってくるって」
「えっ!?」
「マジわかりやすすぎっ。超おもしれぇ」
清水くんがケラケラ笑った。
(まずい…怒られる…)
直立不動のまま固まって暫くたった頃、高遠くんが息を切らせて戻ってきた。
「おま…っ、マジでふざけんなよっ」
「俺はただ柚香先輩を見つけたから声をかけて、ちょっと一緒に歩いてただけだよ」
「だからっ、それがふざけんなっつーんだよ」
高遠くんに抱き寄せられる。
「近づくなって言っただろーが」
「お前に何の権限があって俺がそれを守んなきゃいけないんだよ。ほんとに独占欲強いな、翔は」
清水くんが鼻で笑う。
「まぁ落ち着けよ、翔。別にお前とケンカしたいわけじゃないんだからさ。今日のところは帰るよ。じゃあまたね、柚香先輩」
手を振って、清水くんは駅の方向に歩いて行った。