その背中、抱きしめて 【上】
「勘が戻らないって言うなら、戻るまで練習付き合うし」
「えっ!?いや、いいよ。そんな時間あったら高遠くん自分の練習して?」
私のおままごとみたいな願望に、うちのエースの手を煩わせるわけにいかないよ!
「先輩の練習相手だったら普通に俺の練習にもなるよ」
そう言って高遠くんは笑う。
「先輩は何でも遠慮しすぎ。俺に気ぃ遣って自分は我慢ばっかりで。そんなに俺、頼りない?もっと頼ってよ」
今度は寂しそうに笑った。
「違うよ!頼りなくなんかない。高遠くんはしっかりしすぎるほどしっかりしてて、私の方が年下みたいだもん。でも、だからあんまり負担になりたくなくて…」
私の方が年上なのに迷惑かけたり助けてもらったり、幸せをもらったり。
「私、高遠くんから色んなもの貰ってるのに、何も返せてないし」
ぺちっ。
「ぃいった…!!」
突然のおでこの痛み。
デコピンを食らったことを理解するまで数秒かかった。