その背中、抱きしめて 【上】
朝はあんなに緊張してたのに、嘘のように集中して勉強できてる。
しかも楽しい。
(勉強ってこんなに楽しかったっけ)
きっと、理解できてるから楽しいんだ。
さっぱりわからなかったら、とっくに投げ出してるもん。
わからないところを高遠くんが私の教科書見ながら丁寧に教えてくれてるから、そして私の質問に根気よく答えてくれるから理解できてるんだ。
(家庭教師じゃん?…年下だけど)
頭がいい人は教えるのも上手い。
午後もあっという間で、少しずつ日が暮れてきた。
「4時半か。暗くなる前に夕飯の買い出し行こうか」
高遠くんの提案で外に出る支度を始めた。
同じ家から一緒に、家の鍵をかけて出て行くのって何だかドキドキする。
一緒に住んでるみたいで。
「何ニヤけてんの?」
高遠くんが意地悪そうに笑う。
「一緒に家を出て行くのって、なんか一緒に住んでるみたいだなぁって」
「嬉しいんだ?」
「嬉しいよっ。高遠くんは何も思わない?」
私ばっかり?
少し拗ねて聞いてみる。
「嬉しいよ。奥さんと買い物行くみたいで」
『奥さん』
いつかなれるかな、高遠くんの奥さんに。
そうなったら、週末には一緒にお買い物行きたいな。
(愛想尽かされて別れないように頑張らなきゃ)
幸せいっぱいだったのに、恐ろしいことを考えて身震いした。