その背中、抱きしめて 【上】



「私お風呂掃除してくるから、高遠くんカレー作っちゃってね」

家に着いてすぐ二手に分かれる。


「先輩、あとで一緒に風呂入ってくれる?」


廊下に出たところでキッチンの高遠くんから声がかかる。

一緒にお風呂!!??


「は、入るわけないでしょ!!!!!」

怒鳴ったつもりが、声が裏返った。

高遠くんが思いっきり吹き出す。


「ぶはっ!動揺しすぎ!」


「もーー!からかわないで!!!」

恥ずかしさを隠すために小走りでお風呂に向かった。



そういえば、夏の終わりに怪我してる高遠くんを送り迎えしてた時、雨に降られてこの脱衣場で高遠くんの服に着替えたっけな。

懐かしいなぁ…もうずいぶん前のことのように感じる。


お風呂を洗ってお湯を溜めて(といってもボタン1つでお湯張り全自動だけど)キッチンに戻る。

器用に包丁でジャガイモの皮を剥いてる高遠くんを、対面のカウンター席に座って眺める。

「いいなぁ、こういうの」

高遠くんがご飯作ってくれてる。

あんまり現実味がなくて、ふわふわした感じ。


「見てるだけで手伝ってくれないの?」

「手伝うよー」

キッチンに回って後ろから高遠くんを抱きしめた。


「っぶね。先輩?なに急に。どした?」

私が急に抱きしめたから高遠くんの体が動いて、手元が狂ったみたい。

さすがの高遠くんもギョッとしたらしい。


「ごめんね。なんかね、ぎゅってしたい気分なの」

「手伝いもしないで?」

「そ。こうやって高遠くんがご飯作ってるの見てる」

「なんじゃそりゃ」


高遠くんが苦笑した。



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