氷の魔女の春さがし
 笛は少年が吹いていた。

 老人も笛を手にしていたが、ただ持っているだけで、ニコニコと少年の演奏を聴いていた。

 笛の音色に誘われるように雪がみるみる解けていき、その下から色とりどりの花々が顔を出す。

「おお、山の女神がお目覚めになられたぞ」

 老人の声にスリサズが辺りを見回したが、それらしき姿は見つけられなかった。
< 13 / 107 >

この作品をシェア

pagetop