モテ系同期と偽装恋愛!?
斜めに長く伸びる自分の影を睨むように見ながら、嫌で仕方がない気持ちを押し込め、しっかりしろと心の中で檄を飛ばす。
すると、横山くんに注意されてしまう。
「紗姫、眉間にシワが寄ってる。スマ〜イル」
「分かってるわよ」
分かっていても、こんな気持ちで愛想のよい笑みを浮かべるのは結構難しい。
眉間のシワは解けないままに、口の端だけ無理やり吊り上げて笑ってみせると、横山くんが吹き出した。
「やべ〜、その顔ウケる」
「笑わせてるつもりはないんだけど」
「それなら、もっと気を抜きなよ。大丈夫だから。飲み会は俺の得意分野だし、絶対に紗姫も楽しめるようにするからさ」
確かに横山くんは私と違って宴会慣れしてそうで、得意分野だと言い切るくらいだから、盛り上げ上手なのだろう。
私がいつも不参加の部署内や同期の飲み会も、横山くんがいるから参加するという人が多そうな気もする。
そんな宴会スキルの高い彼でも、私を楽しませるのは不可能。
男性の間に座らされ、体がくっつかないようにと気にしながら笑顔を作り続けないといけないなんて、私にとっては拷問に近いことなのに……。
重い足取りで、コンクリートの建物内に足を踏み入れた。
スナック葵はビルの3階で、同じフロアに他に2店舗分のスペースがあるのだが、シャッターが下ろされ、店舗募集の不動産屋の張り紙がされていた。