モテ系同期と偽装恋愛!?
去年はもう一軒スナックが営業していたのに、辞めてしまったみたい。
廊下の蛍光灯はチカチカして今にも切れそうで、やっぱりお客さんが少なくて経営が大変なのだろうと同情しながら、スナック葵のドアを開けた。
今は18時15分。約束の15分前。
それなのに草沼さんを始めとした葉王の男性社員9名が既に揃っていて、ビールや焼酎水割りを片手に宴会を始めていた。
「遅くなりまして、すみません」と横山くんが謝ると、草沼さんが赤ら顔で言う。
「いーんだよ、ただの飲み会で接待じゃないんだから。むしろゴメン。うちは早く飲みたい仕事嫌いのオヤジばかりでさ〜」
謝ったのに謝られ。
草沼さんの言葉に葉王の他の男性たちが、酔っ払いの明るいテンションで大笑いしていた。
それほど広くない店内は貸切状態だった。
アーチ型の7、8人掛けの長いソファーに、その形に合わせた楕円のテーブルと、丸椅子が3つのボックス席。
他は4つの椅子が並んだカウンター席のみ。
テーブルの上には予想通り、去年と同じ出前の寿司桶がどんと置かれていて、スナックのつまみも数種類並んでいた。
これもやはりと言うべきか、私と横山くんは葉王の男性社員の間に別れて座らされた。
日中の商談の場にいなかった人たちに名刺を渡して挨拶すると、これまたやはりと言うべきか、横山くんの呼び方がすぐに『遼介くん』になっていた。
彼の隣に座っている人は天下の葉王の副工場長なのに、横山くんは……。
「そうなんですよ! 俺も犯人はてっきりゴトウだと思って……」
出会って3分で、取引先のお偉いさんとドラマの内容で盛り上がれる、その親しみやすさという強力な武器が羨ましくもあり、その一方で「嘘でしょ……」と、少し引いてしまう自分もいた。