モテ系同期と偽装恋愛!?
どう頑張っても私にはできない芸当だと考えていたら、「紗姫ちゃんもお寿司食べてね」と、右隣に座る草沼さんに言われて驚いた。
紗姫ちゃん、て……。
「い、いただきます……」
去年は終始『横山さん』と呼ばれ、今日の商談の場でもそうだった。
それが突然『紗姫ちゃん』になってしまった理由は、明らかに横山くんのせい。彼のついでに私も下の名前でと……。
困惑しながら勧められたお寿司を一貫口にして「美味しいですね」と作り笑顔を向けていた。
そんな私の4つ隣の席では横山くんが……「遼介、昼間のあの話、副工場長にも聞かせてあげて」と、名前を呼び捨てにされるほどに、更に仲を縮めていた。信じられない……。
ビールをチビチビと口にしながら、時間は過ぎて19時半近くなる。
不思議……両隣を男性に挟まれているのに、私、まだ大丈夫だ。
もちろん緊張もしているし、左右の男性がテーブル上のグラスに手を伸ばすたびにピクリと反応して、怖くもあるけれど、まだ手は震えていない。
心に余裕があるのは明らかだった。
ガチガチに固まることもなく、話しかけられると作り笑顔でそれに応じられる自分に驚いている。
どうして……男性恐怖症とも言えるこの症状が、治ったとか……?
いや、違う……やっぱり横山くんがいてくれるお陰だろう。