モテ系同期と偽装恋愛!?
首をほんの少し横に傾げると、彼はニッコリと私に笑いかけ、それからよく通る声で言った。
「うちの姫も花火を見に行かせてやりたいんですけど、いいですか? 花火大会があると聞いてから、ずっとソワソワしてたんで」
え……花火は見たいけれど、決してソワソワしてないし、見れないだろうと思っていた。
飲み会も仕事の内だという自覚があるから、ワガママを言うつもりは毛頭ない。
急いで横山くんの言葉を否定しようとしたが、私が口を開く前に左隣に座っていた葉王の男性が立ち上がり、私が抜けるための道を作ってくれる。
「あ、あの、私は別に……」
「紗姫ちゃん、行っておいでよ。廊下の窓からよく見えるから」
「やっぱ女の子だな〜。
花火が大好きだなんて可愛いな〜」
道を開けてもらい、口々にそう言われて、立ち上がったが、本当に抜けてもいいものかとまだ迷っている。
「早く行きなよ」と横山くんがビールグラスを片手に言う。
「そうそう、早くしないとすぐ終わっちゃうから」と草沼さんが笑った。
「この町、金ないから大量に打ち上げられんのよ。花火と祭りにうちの工場から3分の1は金出してやってるんだけどな」
「さすが葉王さん、太っ腹ですね〜。
で、協賛の皆さんは花火を見なくていいんですか?」
「いいか遼介、男は花より団子。
花火より、寿司と酒と葵ママだ」
横山くんの問いに、副工場長が上手いこと言ったと自信ありげな顔をして答え、スナックのママさんに「おだてても負けないよ」と言われていた。
ワハハと大きな笑い声に包まれて、本当に抜け出しても誰も気にしなそうな雰囲気。
それを感じてペコリと頭を下げると、私は花火を見るためにスナックを抜け出した。
横山くんにありがとうと、心で呟きながら……。