モテ系同期と偽装恋愛!?
横山くんが答えを求めている相手は、彼女たちではなく私だと分かっていた。
それでも私だけはなにも言えずにいる。
心の中でどうしようと繰り返すだけで……。
その時、廊下の角を曲がった向こうにドアの開く音がして、スナックのママさんの大きな声が響いて聞こえた。
「ちょっと、うちの女の子ー、どこ行ったのー! 花火終わったんでしょー? 働かないと給料出さないよー!」
その言葉で我に返り、花火の打ち上げが終了していることにやっと気づいた私。
お姉さんふたりは「ヤバッ」と呟いて、高いヒールのパンプスをカツカツ鳴らし、急いでお店に戻ってしまった。
ママさんが開けたドアから葉王の男性たちの盛り上がっている笑い声が聞こえ、カラオケの音も大音量で漏れていた。
それがドアをバタンと閉められたことで、急に途絶える。
静かな廊下で、2メートルほどの距離を置いて、向かい合って立つ私たち。
「紗姫」と、どこか緊張をはらんだ声で名前を呼ばれ、明らさまに体をビクつかせてしまった。
それでも困る言葉を言われないようにと、慌てて私の方から先に話題を振る。
「も、戻った方がいいと思う。
ほら、横山くんがいないと盛り上がらないだろうし……」
「さっきの聞こえなかった?
俺が抜けても、すげー楽しそうな声が響いてたけど」
「で、でも、ふたりして抜けるのはマズイから……横山くんが戻らないなら、私だけ先に戻ってる」
決して目を合わせないにして、彼の横を走り抜けようとしたが、手首を掴まれ引き戻された。
「や、やだ……離して……」
「やっぱり震えるんだな。観覧車の時にも思ったけど、やっぱり紗姫って男性恐怖症だろ」
「違う!」
「隠すなよ。そう考えると全てに合点が行く。
社内でわざとツンツンしてんのは、男よけのためか?」