モテ系同期と偽装恋愛!?
旅館の部屋で男性とふたりきりになるのは、私にとって恐怖でしかない。
それを分かってロビーでと言ってくれる横山くんとなら、逆に、部屋でふたりきりでもいいような気がしていた。
それで、横山くんの部屋に行くと言ったら、彼は意表を突かれた顔をする。
「いいの?」
「うん。横山くんを信じているから、大丈夫」
「それは……嬉しいような、男としては苦しいような……。まあ、なにもしないけど」
顔を見合わせて笑い合う。それから並んで歩き出し、旅館緑月に足を踏み入れた。
小さなロビーの照明は半分落とされ、夜仕様となっている。
日中、荷物を預けに来た時には宿泊客がソファーに座ってテレビを観ていたが、今は誰もいない。
薄暗いロビーはシーンと静まり返り、フロントにも誰もいないので、カウンター上の呼び鈴を鳴らした。
荷物を預けてもチェックインはまだなので、部屋の鍵をもらわなければならない。
すぐに奥の暖簾を潜って出てきてくれた人は、去年も見た顔で、50代くらいの男性。この宿の主人だ。
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」
「はい、横山です」
昼間は既に隠居しているようなおばあさんが対応してくれて、なかなか話が通じずに困ったが、ご主人相手だと少ない言葉でスムーズにチェックインの手続きが進む。