モテ系同期と偽装恋愛!?
新婚という勘違いをきちんと訂正しないままに宿を出てしまった私たちも悪いので、文句は言わずに丁寧にお願いした。
しかし、焦りを顔に浮かべるご主人に、申し訳ありませんと断られてしまう。
なんでもキャンセル扱いとなったひと部屋には、既に飛び込みの宿泊客を入れてしまったらしい。
さらには5年に一度の祭り期間中なので、今日は他に空き部屋もなく、この元温泉街にある他の旅館も満員御礼だと言われてしまい……。
宿のご主人は心底申し訳なさそうに謝ってくれるが、困る状況に変わりはない。
すると横山くんが車で寝ると言い出した。
そんなことはさせられない。
今日一日、私よりずっと活躍してくれて迷惑もかけてしまった。
明日の帰りの運転も横山くんなのだから、しっかり布団で寝て体を休めてもらわないと。
どちらか一方が車で寝なければならないとしたら、それは私だろう。
でもそんなことを言い出しても、横山くんが頷かないのは聞かなくても分かる。彼は優しい人だから。
お酒を飲んでいるので、車で隣町のビジネスホテルに行くこともできないし……。
横山くんを布団で休ませる方法はひとつしかなかった。
カウンターの上に置かれたひとつだけの鍵を手に取り、私は宿の主人に言った。
「ふたりで、ひと部屋でいいです」
すると隣で横山くんが目を見開き、慌てて私を止めようとする。
「無理だろ。俺はよくても、紗姫が……」
「大丈夫。さっきも言ったでしょ、横山くんのこと信じてるから」
「紗姫……」
どっちにしろ、これから話を聞いてもらおうとしていたのだから大差はない。
1、2時間話を聞いてもらった後に、お風呂に入って、並んだ布団で寝るだけで……。
あれ……お風呂に布団……やっぱり大差あるかも。大丈夫かな、私……。