モテ系同期と偽装恋愛!?
横山くんのことを信じていても、不安が頭を過ってしまう。
でも宿の主人に感謝されるし、言い出したのは私なのだからと、不安を無理やり押し込めて、ひとつだけの鍵を手に歩き出した。
部屋番号は207。色あせた絨毯敷きの狭い廊下を進み、階段を上がって部屋前に辿り着いたが、鍵を差し込むのを躊躇してしまう。
「紗姫、やっぱ俺は車で……」
隣で横山くんがそう言いかけるので、「大丈夫だから」と彼にも自分にも言い聞かせ、慌てて鍵を開けた。
軋むドアを開けて中に入ると、目の前には襖。
靴を脱いでその襖も開けると、目に飛び込んできたのは布団だった。
広さ8畳ほどの和室いっぱいに並んで敷かれたふた組の布団。分かっていたはずなのに、息を飲んでしまう。
でも、戸惑う姿を見せればまた横山くんが車で寝ると言い出しかねないので、なるべく平静を装おうと努力していた。
意味もなく洗面所を覗いてみたり、障子を開けた先にある窓際の小スペースの椅子やテーブルに触れてみたり、小型冷蔵庫を開けてみたり……。
過度に横山くんの存在を意識しないように……そう思えば思うほど、逆に落ち着きのない行動をとってしまう私。
一方横山くんは、部屋の隅に寄せられた座卓の上の館内案内のパンフレットを手に取って読んでいた。