モテ系同期と偽装恋愛!?
長谷川さんはコツコツとパンプスのヒールを鳴らして近づいてきて、私の真横で立ち止まった。
私より小柄で入社年数も3年下の彼女だが、敵意のこもる視線で見下ろされて、肩をビクつかせてしまう。
「横山さんに質問があるんですけど、いいですか?」
「はい……」
「遼介くんの今の彼女があなただという噂は、本当ですか?」
「はい……」
頭に描いてしまうのは、罵られる展開。
中学の友達のユウたちのように、横取りしないでと言われる気がして怖くなり、身構えた。
しかし長谷川さんは、睨むだけで黙ったまま。
しばらく無言の間が続いて、彼女はそのまま何も言わずに背を向け、社食から出て行ってしまった。
廊下に響くパンプスの音に強い苛立ちが感じ取れるのに、感情をぶつけてこないなんて……。
てっきり罵られると思っていたから、拍子抜けしてしまった。
そこに今度は遼介くんが現れた。
「お待たせ。ん? ポカンとしてどうしたの?」
「あ……ううん、何でもない」
長谷川さんのことを言うのは躊躇われた。
実害がないのに、告げ口するような真似はしたくない。
それに長谷川さんに対して、申し訳なさを感じている。
振られても遼介くんのことを、まだ好きなのだろう。
彼女は本気で彼を想っているのに、恋心を抱けずにいる私が付き合っているなんて……ひどいことをしている気分になってしまった。