モテ系同期と偽装恋愛!?

気持ちよく喋り続ける彼女に、耳を塞ぎたい気持ちで「やめて」と呟いた。

気弱な私のその声は小さ過ぎて届かず、呆れたような溜息をついた桃ちゃんが、代わりに口を開いてくれた。

「いい加減にしな」

ぴしゃりと言って3歳下の彼女を黙らせてから、諭すように語りかける。

「フラれて悲しいのも悔しいのも分かるけど、その気持ちをぶつける相手が違うでしょ。別れに納得していないなら、もう一回遼介に告白してきな」

「そんなことしても無駄じゃないですか……私が横山さんに敵うわけないのに……」

「当たって砕ける度胸がないから、紗姫に絡んで憂さ晴らしするというの? やめなよ、みっともない。逆恨みじゃない」

長谷川さんは唇を噛み締めて、俯いた。

彼との想い出を話している時の少し得意げな表情は消えて、「恨んでないのに……」と独り言を床に向けて呟く。

それから踵を返して、廊下の角を曲がって総務部の方へ消えて行った。

「なにアレ。紗姫、あんなの気にしなくていいからね」

「うん……桃ちゃん、ありがとう……」

並んで歩き出しながら、恨んでないと言った長谷川さんの言葉と、話している最中の楽しそうな顔を思い返していた。

初めは嫌がらせのつもりなのかと思ってしまったが、恨んでいないという言葉が本当なら、どうして彼との想い出を私に話したのか……。

私にも愛されていた時期があったのだと、どこにも行き場のない想いを聞いてほしかったのか……。

まだ遼介くんのことを忘れられない彼女の一途さに、胸が痛んだ。

私、このまま遼介くんに甘えていてもいいのかな……長谷川さんのように、恋することもできずにいるのに……。


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