モテ系同期と偽装恋愛!?
◇◇◇
10月も半ばを過ぎた平日のこと。
いつも通りの午前中の業務を黙々とこなす私。
フロアに響くのは誰かのパソコンのキータッチの音と電話応対の声のみで、心なしかライフサイエンス事業部全体が、いつもより静かな気がしていた。
それは多分、遼介くんが出勤していないせいだろう。
昨日の午後、タイにいる彼から、これから帰るというメールをもらった。
先週からの5日間予定の出張は、1日延長してやっと商談がまとまり、今日は午後から出社予定みたい。
それまでは、なんとなく活気の落ちた、この静かな雰囲気が続くのだろうと思う。
腕時計を見て、12時までにはまだ1時間以上あることを確認し、早く時が経てばいいのにと小さく溜息をついた。
海外出張の多い遼介くん。それを淋しがったせいで歴代の彼女たちは彼と別れることになったという噂がある。
かつては分からなかったその気持ちが、今は私にも理解できる。
ただ、そこに恋愛感情が欠落している分、淋しさの度合いは低い気もするが……。
チームで作成した書類のチェックを終えて立ち上がり、部長の席に向かう。
「確認お願いします」とA4紙の束を提出すると、代わりにクリアファイルを渡された。
「ついでにそれ、総務に出しといて。すまんね」
クリアファイルの中には、先月申請された有給申請書が数枚入っているようだった。