モテ系同期と偽装恋愛!?
それから1時間ほどして、遼介くんが出社してきた。
ちょうど昼休みに入る時間なので、いつものように彼の周囲には人が集まり、フロアはたちまち活気づいた。
そして恒例の海外出張土産配布タイムが始まるのかと思いきや……今回はひとりずつに手渡しするのではなく、包みを破ったお菓子の箱を机に置いてのセルフサービス方式。
「ごめん俺、用があるから、適当に持っていって」という声が、私の耳まで届いた。
机7、8個と通路を一本挟んだ自分の席から、中腰で彼のデスクを覗いていた私は、ホッとしていた。
着いて早々、急ぎの用があるということは、私とメールについて話し合っている暇が、今はないということ。
不愉快にさせてしまったことについての謝罪は、後でということで……。
スマホと財布を手に立ち上がった私は、桃ちゃんの席に行ってお昼に誘った。
今日のランチは徒歩4分ほどの場所にあるパスタ屋にしようと、今朝ふたりで話していた。
桃ちゃんが仕事の手を止めて、財布を手に立ち上がる。しかし……なぜか振り向いたその視線が、私を素通りして、斜め上辺りの後方に向けられた。
「遼介、お帰り」
その言葉と同時に、私の体に回される紺色スーツの長い腕。
突然背中から抱きしめられて「ひゃっ!」と変な悲鳴を上げてしまった。
「ただいま。浅倉、今日だけ紗姫貸して」
「それは私に、ひとりでパスタを食べに行けということ?」
「そういうこと。ごめん、パスタ代は払うから。帰りまで我慢できそうにないんだ」