モテ系同期と偽装恋愛!?

大抵の場合、特訓の内容を口頭で説明してから、彼は私に触れてきた。

それなのにいきなり胸に触られ、キスまでされては、驚きのあまりに顔を背けて逃げようとしてしまった。

しかし、すぐに彼の左手が私の髪に潜り込み、鷲掴んで頭の位置をもとに戻されてしまう。

胸に触れていた右手は、今は私のウエストをガッチリとホールドし、逃げられない状況で再び唇が重なった。

拘束されると、反射的に恐怖心が湧き上がってきてしまう。

ギュッと目を閉じて唇を引き結び、体を強張らせる私は、やっぱりまだ治っていないのか……。

怖いと感じて手を震わせていたら、唇を触れ合わせたままに彼が優しい声で言った。

「紗姫、目を開けて……怖くないよ……。
俺は紗姫を傷つけたりしないと、信じて……」

後頭部を固定している彼の左手の力が、緩むのを感じた。

ウエストに回されている右腕の力も抜かれて、今は添えられているだけ。

優しい言葉と緩んだ拘束に、そろそろと目を開けたら……近すぎてぼんやりとした視界が、彼の瞳の色で埋まっていた。

甘い香りがしてきそうな、チョコレートブラウン……。

ああ……この瞳はずっと私を心配して見守ってくれていたんだ……。

彼のお陰で私はやっと、本来の姿で生活することができるようになった。

今は男性からのアプローチに怯えることもなく、女子社員から冷たい視線を投げられることもない。

こんなにも私のことを考えて、力になってくれた人は過去にいなかった。

遼介くんは優しい人……私を正しい方向へ導いてくれる人……。

だから……遼介くんになら、何をされても怖くない……。

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