モテ系同期と偽装恋愛!?
いつも明るい彼がどうしてしまったのだろうと心の中でうろたえていたら、独り言のように彼が呟いた。
「抱きたいな……紗姫を抱きたい……」
思わずキョトンとしてしまったのは、意味を正しく理解できなかったから。
今、私を腕に抱いている状態で、抱きたいと言われても、これ以上どうすればいいのか……。
その疑問をそのまま口に出したら、違うと否定されてしまう。
その後に「セックスしたいという意味だよ」と、私には刺激の強すぎる言葉が付いてきた。
「あ、あの……それは、ちょっと……」
キスの最中に、遼介くんになら何をされても怖くないと思ったけれど、その中にそこまでの行為は含めていなかった。
今まで頭を掠めたことさえないその単語に、内心焦りまくっていたら、彼が言葉を付け足した。
「しないから安心して。初体験は、紗姫が惚れた男とじゃないとな。
今の俺には、紗姫を抱く資格は与えられていないと分かってる……」
しないと言ってくれたことで焦りはすぐに引く。
その代わりに、今度は申し訳なさが込み上げてきた。
恋する気持ちが、分からない私。
こんなにも色々と協力してくれる優しい彼なのに、どうすれば恋愛感情が芽生えるのか分からない……。
「ごめんね……」
彼が望んでいるであろう言葉とかけ離れた謝罪の言葉しか伝えられず、そのことに対してもまた申し訳なく思ってしまう。
すると彼が珍しく弱音を吐いた。
「やっぱ、ダメなのか……。
ねぇ紗姫、俺ばかりがどんどん好きになって苦しいんだ。どうしたら俺に惚れてくれる?
教えてよ……紗姫……」
彼のひと言ひと言が胸に突き刺さり、ズキズキと痛み出す。
多くの女子社員のように、彼に恋することができない理由が分からない。
どうしたら彼の気持ちに応えられるのか、私も教えてほしい。
何も答えられない私には、黙って彼の背中を撫でることくらいしかできなかった……。