それは秘密です
呆然としながらも、それをスルーする訳にはいかず、機械的に手に取った私ににっこりと笑いかけたあと、加東さんは素早く踵を返し、ゴミ箱の前まで移動した。

手にしていたコップを傾け中身を一気に飲み干し、空になったそれを投下する。


「それじゃ、またね」


そして私に何かを言う隙を与えずに、さっさとその場から去って行ったのだった。

予想はついていたけれど、渡された紙片を開くと電話番号とメルアドが記入されていた。

プライベートな用件で社内のツールを使うのは禁止されているので、今後のことを考え、プライベートで使っているケータイの情報を教えてくれたのだろう。

それをぼんやりと見つめてしまったけれど、すぐにハッと我に返り、私も急いで自分の部署へと戻った。

だけど何だかその後は気もそぞろで、仕事の処理速度はイマイチであった。

正直、浮かれていたのだと思う。

というかぶっちゃけかなり鼻高々で有頂天になっていた。

業務をこなしながらついついにやけてしまったりして。

だって、あの天下の加東さんに告白されたんだもん。

個人的には興味がなかったけど、社内に多数ファンがいる、超エリートで将来高みへと上り詰める事が確実の人に見初められるだなんて、私も捨てたもんじゃないじゃない、なんて悦に入ったりしちゃったりして。


だけど……。


それはあくまでもあの瞬間までの話だ。
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