それは秘密です
しかし、空席を確認しつつ列に並び、実際に食事にありつけるまでに時間を要する社食を利用するのはだんだんとおっくうになって来たし(外食は問題外)仕事量が増えるにつれて、別部署の者同士で退社のタイミングを合わせるのはなかなか難しいのだという事を実感していって。


「電話やメールでやり取りできるし、その気になれば休日にいくらでも会えるんだから、仕事の日に無理して一緒に行動するのはやめよう。お互いのペースで動くことにしよう」という風に話がまとまり、それ以降杏ちゃんと平日ランチやディナーを共にする事はほとんどなくなった。

今はそれぞれ自分の部署の自分のデスクでお昼を食べている。


しかし…。


彼女の名前を脳内で連呼していた私はそこで唐突に思った。

『アン』って、いつ聞いても声に出しても思い浮かべても、つくづく可愛い響きの名前だよな~と。

私なんて『佐藤千代子』だもんね。

とってもありきたりな名字に、昭和を通り越して明治、大正時代を彷彿とさせるレトロでセピアな名前をくっつけられたりしちゃったもんだから何だかもう…。

いや、時代の最先端を行くべく、キラキラでトリッキーな名前をつけられてしまった人にはそれはそれでまた別の苦悩や葛藤があるのだろうけど、だからといって千代子レベルまで逆行しなくても…と思う。

その点『杏ちゃん』はホント、色んな意味でバランスが良いよね。
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