それは秘密です
安堵しつつ、黙々と自分のやるべきことをこなしていき、あと数十分でお昼休み、となった頃。


「失礼します」


別の意味で心乱される出来事が起きた。

加東さんが人事部フロアに颯爽と姿を現したのだ。


「忙しいとこ申し訳ない。六島君いますか?」


ドアを入ってすぐの所にカウンターがあり、そこから一番近い場所に腰かけている私に、来訪者はまず真っ先に声をかけることが多い。

加東さんもそのセオリー通り私に向けてそう言葉を発した。

当然、周りに人がいるので口調はビジネスライクなものだ。


「あ、はい。少々お待ちを…」


六島君の姿を探しているのか、20名ほどいる空間内を見渡している加東さんにそう答えながら立ち上がり、出入口からだと死角の位置にあるシュレッダー前へと歩を進めた。

そこで六島君は破棄書類の断裁処理をしていたのだ。

その間、『良いわね~、佐藤さん。加東さんに話しかけられちゃって…』『くっそー。私があの席だったなら…』という感じの眼差しを数人の女性社員に向けられたけれど、全力で無視した。


「六島君」
「…ん?なに?」


彼に近付き、背後から声をかけると、一拍置いて振り向いた。

シュレッダーの稼働音は結構うるさいので、至近距離で声をかけないとなかなか気付いてもらえない。

つまり来訪者の声などはますます聞き取れないだろう。
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