それは秘密です
なおかつその位置からも出入口付近は死角となるので、六島君は今の段階ではまだ加東さんの存在には気付いていないハズ。


「お客さんだよ。宣伝課の…」


言葉の途中で数歩移動し、カウンター前に視線を向けた彼は、ようやくそのことを認識し、ハッとした表情になる。


「あ。ゴメン六島君。メールもらった件で来たんだけど」
「は、はい」


彼はシュレッダーを停止させ、声を張り上げる加東さんの元へと急いで歩き出した。

数秒後、私もその場を離れ自分のデスクへと戻る。

席に腰かけ、端末を操作しながらさりげなく加東さんと対峙した六島君を盗み見てみると、その横顔は明らかに緊張していた。


「生命保険の払込証明書、やっぱ書類の山の中に埋もれてたよ。これがそれね」


言葉を発しながら加東さんは手にしていた封筒を差し出した。

年下の通勤仲間だからか、人の目があっても私に対するものよりはフランクな物言いである。


「あ、はい」


六島君はそれを両手で受け取った。

労務担当の彼は社員の給与計算、社会保険の手続き等を担当していて、この時期は年末調整の任務も担っていた。

なので申告書の記入もれ、ミスなどないかどうかはもちろんのこと、添付すべき書類がきちんと揃っているかもチェックし、もし何か不備があった場合はその社員に書き足しや訂正、書類提出を促さなくてはならない。
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