それは秘密です
足の速さなら多少自信がある。

いざとなったら数十メートル先にある、あのコンビニにかけこもう。

そこまでシミュレーションしていたけれど、何もトラブルは起きることなく無事に加東さんが現れた。

その姿を認識した瞬間立ち上がり、彼に近付いて行く。


「こんな寂しい場所で待たせてしまったんだ」


至近距離まで近付き、お互いに立ち止まった所で加東さんは開口一番その件について触れた。


「ごめん。もっと早く来れば良かったね」
「いえ。ここを指定したのは私ですし」


……こういう風に、女性への気遣いの言葉がサラッと出て来るのはさすがであると思う。

だからといって今さらほだされたりはしないけどね。


「それで、返事を聞かせてくれるってことだったけど…」「はい、そうです」


ちょっと食い気味に肯定した。


「さっそくですけど、ごめんなさい。私、加東さんとは付き合えません」
「え。そんなに早く結論を出しちゃうの?」


彼は困ったような笑いを浮かべながら返答した。

これまた予想通り、公園敷地内の光量は充分ではなかったけれど、間近で対峙している人物の表情くらいなら把握できる。


「じっくり考えてって言ったのに」


しかしそういったリアクションであるにも関わらず、彼からはどこか余裕が感じられた。
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