太陽と月の後継者
「ねぇ、何してるの?」

ビアンカが思わず目を瞑ると聞いたことのある声が聞こえて目を開ける。

「…り、オ?」

ビアンカはリオの腕の中にすっぽりと収まり、姫抱きにされていた。

ビアンカとキルは目を瞬かせる。

「何してたかって聞いてんだよ」

いつまでも目を開いているキルに、
リオからは想像出来ないほどの唸るような声が発せられた。

「キル・フランだっけ?
君、潰されたいの?」

「…どうして、ここがわかった」

「んー、俺って五感が鋭いんだよね。
さっき、食堂で話してたこと聞こえちゃったー。」

驚異の五感。

これぞ、風の大狼族次期当主のリオの実力だ。

「チッ…」

「悪いけど、君みたいなのにかまってる暇ないんだ。

ここから、消えて?」

リオがそう言うと、瞳は一瞬金色に輝き、次の瞬間にはキルは風によって外に運び出されていた。




「…ありがとう」

地面に足をつけたビアンカは、
ホッと息をついた。

「うん!ビアンカって勇気があるんだねー。

夜に男と会うなんて…

襲われたいの?」

顔を近づけ、珍しく低い男の声を出したリオは、何処か怒っているようだ。いつもの明るいリオはどこにもいない。

「…じゃあ、どうすればよかったのよ。」

消え入りそうな声で呟いた声は、もちろんリオに聞こえている。

「ばーか」

「っ!だれがバか「馬鹿だよ」」

「ちゃんと、頼ってよ…。
俺、期待してたんだよ…。

信用出来ないなら、信じてくれるまで守るから。」

今日初めて話したはずなのに

まるで、前にもこんなことがあったかのように話すリオ。

それに懐かしさを覚えるビアンカだった。

何かわからないが、胸にぽっかりと穴が空いている。

その穴が埋まっていく感覚がして、ビアンカは一筋の涙を流した。

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