太陽と月の後継者

「…クレア・フルーム!!」

会場の何度目かの声援と舐めるような視線にクロエを居心地の悪さを覚えた。

舐めるような視線

それもそのはず、
今始まった第二試合。

容姿がこの世のものとは思えないほどのふたりが揃う。

『ルカ』

クロエは、躊躇うような視線をルカに向けた。

「…躊躇うな。躊躇うなら俺達は本当の仲間じゃねーよ。それに、俺は強いから。」

その言葉に、クロエは頬を打たれたような気がした。

『…目が覚めた。そうだよね。
躊躇ってちゃルカに失礼だもん。』

クロエは吹っ切れたように笑顔を向ける。

その笑顔を見て、
ルカは一瞬頬を緩めた。

「ー止ー」

ルカが呟くと時間が止まる。

『やっぱり時の魔法を持ってたんだね。』

クロエとルカ以外の時は止まる。この世界に動くものは2人だけ…。

「…お前には効かない。」

『知ってる』

ふたりはニヤリと口角を上げる。

「ー黒龍ー」

『ー白龍ー』

二つの異なった力が交わり合う。

この攻防戦は長きに渡った。




『ルカ…諦めなさいよ。』

「誰が諦めるって?」

ふたりとも平気そうに見えるが
息切れ切れだ。

『時を動かしたらいいじゃない。
そうすれば楽になるでしょ?』

「それはお互い様だろ。」

次の瞬間には、クロエの目の前にルカの綺麗な顔があった。

「これ、外したらいいだろ」

ルカの手の中には赤い宝石のついたネックレス。

クロエの背中に嫌な汗が流れた。

(ルカが、なんでそれを…)

ルカから距離を置いて息を整える。

『そう…お互い様ね。』

「あぁ」

その後も激しい戦いが続いた。

もうすぐ、決着がつく。

ルカは最初から負ける気でいたのだ。クロエもそのことを知っていて戦っていた。

「俺の負けだ。」

そうルカが言うと、
時がまた、始まる。

会場側からしてみれば、
戦いは今始まったところなのだが、
クロエとルカの様子を見るに、
戦いは終わったように感じられる。

切れ切れの服に少しの血痕。

そして、ふたりのなんとも言えないような
笑顔がそれを物語っていた。

「勝てよ」

『もちろん』

それだけ言うと、ルカは会場から何も無かったかのように退場していく。

(ルカ…ルカも私と同じで力を隠してるの?)

届かないルカの背中にそう問いかけた。

「えーーと?
何が起こったのでしょうか。
全くわからない…。

ですが、
第二試合の突破者は
クレア・フルームということで
間違いないでしょう!!

決勝戦に見事進出された
Michiru
そしてクレア・フルーム

両者の戦いは
3時間後
2時からの開始となります!!

お見逃しないよう!」

その言葉の合図でクレアは全身から力が抜けたようにその場に座り込んだ。

「クレアーーっ!!」

「クレアっ!!」
< 74 / 220 >

この作品をシェア

pagetop