りんごのほっぺ



「林檎ちゃん凄い暴れようだったもんなあ」



ケタケタ笑いながらベンチの横にある自動販売機にお金を入れている。

──ガコン、ガコン!2つ飲み物が落ちる音が聞こえた。……ん?2つ?



「あいよ、リポD」



冷たい瓶を少し遠慮がちに頬に当ててきた。その冷たさで、パチリ、目が覚める。



「…くれるんですか?」

「それ飲めば元気になんだろ」



”元気になる”。そんなすぐに効果を発揮する飲み物じゃないけれど、那智さんの優しさが心に染みた。

横たわったまま受け取ったリポビタンDをぎゅっと握りしめる。冷たくて気持ち良い。

那智さんは私の隣に腰を下ろすと、プシュリ、缶ジュースのプルトップを開けた。

………家に、帰らないのだろうか?もしかして私を待ってくれてる?いや、そんな訳……でも。



「…な、なち、さん、」

「ん?」



優しいトーンの「ん?」が返ってきて、一瞬、言葉が詰まる。…そんな柔らかい声、出るんだ。



「…まだ、帰らないんですか?」

「これ飲んだら帰るぞ」



そう言ってコーラの缶を前に突き出す。

あ、良かった。私の事は待ってなかったみた……



「勿論、林檎ちゃんを担いでな」

「え?」



思わず漏れた声に那智さんがふわふわ笑った。

そんな顔で驚く事か?と一緒に帰る事が当たり前だと言わんばかりの笑みだった。
< 52 / 59 >

この作品をシェア

pagetop