幻が視る固定未来
「――なんか元気ないね。どうしたの寝不足?」
「いや」

昼休みの教室。オレはずっと上の空で昼を迎えていた。
言うまでもない、考えているのは有希乃のこと。あんなことを言っておいて今更になって後悔する。
昨日、自分の部屋に戻るとすでに有希乃は自分の部屋に戻っていた。それが怒りではなく、ただ単に時間が遅いからだと信じてオレは寝たのだが、やはり考えは間違っていなかった。

朝になり、いつもと変わらない表情で有希乃は現れた。もちろんオレは昨日言い過ぎたと誤ったのだが『気にしてない』の一言で返される。
本当に何を考えているか分からないから困る。その言葉が本心なのか、それとも召使いとして言ったのか。
もちろんオレは本心であって欲しい。けどそれはオレの都合だ。もし逆の立場ならオレは部屋に行かないだろう。
何故なら、自分のために巨大な命令に逆らおうとしているのに、逆に怒られたんだから愛想が尽きるのは当然だろう。
だから『気にしない』と言われても余計に不安なんだ。
これほどまで有希乃の心情を知りたいと思ったことはない。

「悩み事なら聞くよ?」

オレはそんなに顔に出てるのか? なんか本気で芳原に心配された。
けど、まぁこんな感覚は始めてだ。聞いてみるのも悪くはないし参考にはならないだろうか。
オレはそう思って、有希乃のことを話した。もちろん有希乃であることを伏せて、ただの召使いの一人の気持ちが分からないことを。
< 78 / 383 >

この作品をシェア

pagetop