恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「看護なんてできない。俺にできるのは、親父の話し相手だけだ」
病気の家族に付き添うだけでも、ストレスはあるだろう。
彼がほとんど残業をしないのは、お父さんのお見舞いに行くためだったのかもしれない。
父親の気持ちを落ち着けるために、夜遅くまで病院にいる一成の姿が自然に想像できた。
連休にどこも行けないと言ったのも、きっとそのため。
病気のお父さんを置いて、遠出なんてできるわけないものね。
私とこうして会う時間を作ってくれていたということは、他にも交代でお父さんの様子を見にいってくれる人はいるんだろうけど。
「嫌なら、途中で降りていい」
「はい?」
「こんな重い話、つきあいきれないだろ。そう思ったら、言ってくれ」
運転中の横顔からは表情が読み取りにくくて、それが彼の本心かどうかはわからなかった。
「……いいえ、行きます」
たしかに、重い。付き合い始めたばかりの私には、重すぎる。
けど、ここで帰ろうという気にはどうしてもなれない。
だって、さっき一成は言ったんだもの。私の手を握って。
“もし良ければ、一緒に来てくれないか”
私には、それが“心細いから一緒にいてほしい”と言っているように聞こえたから。
私の返事を聞いて、一成は「そうか」とうなずいた。
それ以降、車内の会話は途絶えた。