恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


一成は看護師さんに軽く頭を下げ、病室の戸をノックする。


「親父、俺だ。入るよ」


引き戸を静かに開けると、人の声がした。先に誰か来ているみたい。


「あの……私も入って大丈夫でしょうか?」


いきなり親戚でもない私が入って大丈夫だろうか?

躊躇していると、一成が振り返る。


「問題ない」


その言葉に少し安心して、彼に続いて病室の中に入る。

どうやら個室らしく、ベッドは一つしか見当たらない。

けれどそこは、私が想像していたただの病室とは少し違った。

床には絨毯が敷き詰められており、小さな流しと冷蔵庫が設置されていた。その横には、クローゼットまで。

反対側にはトイレだけでなく、浴槽までついているのがちらっと見えた。

ベッドの正面には大型液晶テレビ、横にも小型テレビが。

しかしせっかくの設備は使われた痕跡がほとんどなく、テレビもついていない。


「ここはどこだ?」


くぐもった声が聞こえ、びくりと体が震えた。

ベッドの中で、もそりと何かが動く。その横には、先人の姿が。

それは、一度だけ会ったことのある副社長。一成のお兄さんだった。

生気のないそれが、生きた人間だと気づくのに、数秒を要した。


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