恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「だから、病院だって」
「どうして俺は、病院になんているんだ。家に帰らせてくれ!」
部屋中に響く大きな声。またもやびくっとすると、副社長の横にいた看護師さんが、こちらを見た。
「日下さん、次男さんも来てくれましたよ」
大きく明るい声で話しかける看護師さんの声が聞こえたのか、ベッドの上の人が口を閉じてこちらを見る。
それは、入社式のときに見たっきり会ったことのなかった、やせ細った社長だった。
入社説明会の時に作った資料では、もっとハリのある笑顔をしていたのに。
落ちくぼんだ目にこけた頬。ヒゲは看護師さんに剃ってもらったのか、あまり生えていない。
腕に挿入された点滴の針が痛々しかった。
「一成。それにシンデレラの……」
副社長の声に、我に返る。慌てて会釈をするが、社長はじっとこちらを見ているだけだった。
「父さん、大丈夫です。みんないますよ。病気を治して元気になったら、家に帰りましょう」
一成が低く落ち着いた声で言いながら、社長に近づく。
その硬そうな手を握ると、社長は荒かった息を落ち着け始めた。
「なんだよ。やっぱり、俺だけじゃダメか」
副社長が苦笑いのような表情を浮かべる。