恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
社長が点滴が刺さったままの腕を動かし、こちらに手を出す。
その震える手を、とっさに握った。その手は冷え性の私より、よほど冷たい。
「私も、お会いできて嬉しいです。早く元気になってくださいね」
冷たい手を少しでも温めようとしてさすると、社長の目が潤んでいくように見える。
もしかして泣いてしまうのかと思ったけど、社長はそのまままぶたを閉じた。
「ありがとう……」
そう言ったきり、社長は黙ってしまう。
「お休みになられたようですね。昨夜からなかなか落ち着かなかったので、疲れていたんでしょう」
見守っていた看護師さんがそう言った通り、体の上に置いた手から、少しずつ力が抜けていく。
「じゃあ、ここでこうしていても仕方がない。俺は帰るよ」
副社長はあっさりとそう言うと、さっさと病室から出て行ってしまう。
「ちょっと待て」
一成がその後を追う。
私は社長の手を離すことに躊躇したけど、結局追いかけることにした。
「また来ますね」
聞こえていないであろう社長に申し訳程度にそう挨拶し、病室の引き戸を開ける。
すると、ナースステーションの向かいにあるデイルームに、二人の姿が見え、近づいた。