恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「悪い。あとで必ず連絡する。説明するから」
早口でそう言うと、それ以上私に何も聞かれないようにするためか、早足でその場を去っていった。
いったい、何が起こってるの?
どうして私、一瞬でも存在を忘れられて、そして置き去りにされてしまったの?
呆気にとられて一成の行ってしまった方をぼんやり見ていたら、ぽんと肩を叩かれた。
「送っていくよ」
そう言ったのは、副社長だった。
「いえ……」
けっこうです、と言いかけた私に、副社長は薄く笑いを浮かべた顔で言葉を被せてくる。
「こんな儚げな女性を、ひとりで帰すわけにはいかないよ。それに、聞きたくないか? 俺たちが今、何の話をしていたのか」
そう言い、彼は私の背を押す。
「あのっ、お父さんはひとりにして大丈夫ですか?」
寝てしまったとはいえ、さっきまで情緒不安定だったのに……。
そう聞くと、副社長は立ち止まって目を見開いた。
「ああ……夜には、叔母が様子を見に来るはずだから」
少しだけホッとすると、副社長は再び歩き出す。
私は彼に押されるまま、一緒に歩くことにした。
このまま帰って、一人きりで一成の連絡を待つ勇気がなかったから。