恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


「悪い。あとで必ず連絡する。説明するから」


早口でそう言うと、それ以上私に何も聞かれないようにするためか、早足でその場を去っていった。

いったい、何が起こってるの?

どうして私、一瞬でも存在を忘れられて、そして置き去りにされてしまったの?

呆気にとられて一成の行ってしまった方をぼんやり見ていたら、ぽんと肩を叩かれた。


「送っていくよ」


そう言ったのは、副社長だった。


「いえ……」


けっこうです、と言いかけた私に、副社長は薄く笑いを浮かべた顔で言葉を被せてくる。


「こんな儚げな女性を、ひとりで帰すわけにはいかないよ。それに、聞きたくないか? 俺たちが今、何の話をしていたのか」


そう言い、彼は私の背を押す。


「あのっ、お父さんはひとりにして大丈夫ですか?」


寝てしまったとはいえ、さっきまで情緒不安定だったのに……。

そう聞くと、副社長は立ち止まって目を見開いた。


「ああ……夜には、叔母が様子を見に来るはずだから」


少しだけホッとすると、副社長は再び歩き出す。

私は彼に押されるまま、一緒に歩くことにした。

このまま帰って、一人きりで一成の連絡を待つ勇気がなかったから。


< 177 / 286 >

この作品をシェア

pagetop