恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
最初は部長を前にして、慎重に言葉を選んだのであろう知美も、最後の方はうっかり本音が出てしまっていた。
要は、『こんなブスじゃモノが売れない』と言いたいんだろう。
目を丸くしていた事務さんたちも、まるで不快なものを見るような目で、私を見ていた。
「普通の子だからだ。詳しくはここに資料があるから。回しておけ」
何を言われてもクールな表情を崩さない日下部長。
あああやめて、そのブスな社員証写真を載せた資料、みんなに回さないでぇ。
って、気にするべきはそんなところじゃない。
部長が資料を手近なデスクに置いた瞬間、昼休憩の始まりを知らせるチャイムが鳴り響く。
まるで、地獄の門が開くのを知らせる鐘の音みたい。
私、今この瞬間に、知美とすべての女子社員を敵に回してしまったんじゃあ……。
「姫香、今から休憩よね?」
がしりと、痛いほどの力で私の腕をつかむ知美。
その目は、まるで獲物を狙う猛禽類のごとく。
「えあ、あの」
「来て!」
ぐいと腕を引っ張られ、私は何も持たないままオフィスの外へと連れ去られてしまったのであった。