嫌い、のち好き、のち愛
「俺……さ、12歳の時、母親に捨てられたんだ」
話し出した俺に、真咲ちゃんはパンを食べつつ真剣に聞いてくれる。
そう、食べながらでもいいんだ。ただ、話を聞いてほしいんだ。
「物心ついた頃から父親はいなくて、姉ちゃんと母親と三人で暮らしてた。貧乏、だったかな。でも俺は母親のことが、大好きだった。優希……俺の姉ちゃんね。優希と大智は私の宝物よって、そう言ってくれてた」
今、思えば、俺達を宝物だと言ってくれたあの人の顔は苦しげに歪んでいた気がする。
「よくある話なんだけどね。男でもできたのか、俺が一人で寝てる間にいなくなっちゃって。それからは姉ちゃんが必死で俺のこと育ててくれた」
だから、寂しいとか、悲しいとか、そういうことを俺は感じていないと思ってた。