嫌い、のち好き、のち愛
「ご、ごめん。食事してるときにこんな話して」


悪いことしたな、と思った俺はそう謝ったのだが。


真咲ちゃんは険しい顔のまま俺を見ると、勢いよく最後の一口になったパンを頬張った。


もぐもぐと咀嚼すると、俺のことを眉間にシワを寄せて睨んでくる。


「なんでそんな、笑って言うんですか。それに、謝らないでください。あと、昨日から村上さん……たいしたことじゃないみたいに言いますけど、村上さんにとってはすごくたいしたことですよね?」


みるみるうちに真咲ちゃんの大きな瞳に涙がたまっていき、俺はぎょっとした。


ポロポロと大粒の涙をこぼす真咲ちゃんにどうしていいか分からずに固まってしまう。


「よくある話じゃないですから。なんでそんな他人事みたいに話すんですか。村上さん、怒っていいんですよ。そりゃ、育ててくれたお姉さんに恩を感じるのも当然ですけど。村上さんは、もっと感情を吐き出した方がいいんです」


真咲ちゃんにそう言われて、視線が泳いだ。



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