手に入れる女

さっそうと席を立ち、足早に去って行く優香を佐藤はいつまでも見ていた。
一度も振り返らないのは、強情な彼女らしいことだった。

佐藤はしばらくの間ぼうっとそのまま座っていた。
まるで白昼夢を見ていたかのような気分だ。

やはりどこか少しテンションがおかしかったのだろう。
疲れていたせいもあるのだろうか。
優香と一緒にいることが愉快で、次々と表情を変える優香を見ているだけで心臓がどくどくと脈をうってぽーっとなる。
自分を見つけた時の、ぱあっと明るくなったあの表情。部下に見せる怒り。チーズケーキが食べたいと言ったら少し拗ねたように怒る横顔。からかったと言ったら顔を赤くした。
全てが……眩しい。

そして彼女に見つめられた時の、ぞくっとするあの感覚。
体当たりしてくる彼女から逃れる術を持っていなかった。

傲慢で身勝手な、彼女の意志。
それでいて、佐藤の一言ひとことに面白いように反応する。

急にもう少し踏み込んでみたくなった。
もう少しだけ……、もう少しだけ彼女に近づきたい。
まるで磁石のように優香に吸い寄せられる。
危険な欲望だ、ということは頭で理解していたが、佐藤の本能が彼の意志に反して暴走しそうだ。

優香の激しさに抵抗できない。
ずるずると深みにはまってしまいそうな危うさがさらに佐藤を駆り立てる。

優香の情熱に乗ってみるのもあるいは面白いのではないか。どこか人ごとのようにこの状況を楽しんでいる自分もいる。

まるで、初めてバンジージャンプを体験するかのような、軽い高揚感に襲われていた。
そんな風にドキドキする気持ちになったのは何年ぶりのことだろう……


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