手に入れる女
「部長、何、にやにやしてるんですか? 奥様からのメッセージ?」
安藤が、佐藤のそばで声をかけた。
「え!? あ、ああ」
どきっとして安藤を見る。
「奥様は何て?」
無邪気な顔で聞いてきた。
「あ……ああ。ただの帰るコールだよ」
「わー、それだけで照れちゃうなんて可愛いなあ、部長」
「……」
「あの、物流センターから問い合わせ来てるんですけどどうしましょう? 変更ありますか?」
安藤はそれを聞きに佐藤のところに来たようだった。
「あ……それ、オレが受けるよ。ちょうどこっちから連絡しようとしてたところだから」
「何か……張り切ってますねぇ、部長」
「そうか?」
「うん。声が弾んでますよ。奥様からのメッセージ、楽しみにしてたんですね!」
「……」
「あの、私、お先に失礼してもいいですか?」
「おお! もう9時すぎてるもんな。帰ってくれ、帰ってくれ。こんなに遅くまでご苦労様」
「はい。じゃあ失礼します」
そう言って安藤はにこやかに部屋を出て行った。